飲食店の赤字解決法は?主な原因と具体的な対策を解説
現在、飲食店経営をしているものの、赤字から抜け出せずに悩む事業者は少なくありません。あらゆる業界のなかでも、飲食店事業は黒字を維持するのが難しいとされています。経営努力をしているつもりでも、なかなか改善できない場合には、いったいどうすればよいのでしょうか。
今回は、飲食店の赤字について、デメリットや主な原因、赤字から脱却するための具体的な対策を解説します。
赤字に陥る飲食店の割合はどのくらい?
飲食業界は消費者にとって身近な存在ですが、一方で経営が特に厳しい世界だといわれます。さまざまな業態や規模があるため参入のハードルは比較的低いと考えられますが、経営を存続させるのは容易ではありません。飲食店経営の現状はどのようなものなのでしょうか。
日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」によると、新型コロナウイルス感染症が広まる直前の2019年時点を見ると、飲食店の黒字経営は「約33.6%」です。平常時にあっても、7割近い飲食店は赤字であることがわかります。
さらに同調査では、コロナ禍であった2022年度感における黒字店舗は一般飲食店690社中107社と「約15.5%」の割合で、コロナ前に比べて半減しています。感染症のまん延によって消費者の行動が制限され、他者との接触が避けられるなか、飲食店は大きな打撃を受けました。
こうした大きな出来事の前後を通じて、比較的黒字が多いのはカレー料理店です。そのほかの業態を見ても、テイクアウト対応の容易さが経営状態に関連したことが推測されます。
逆に、接待を伴う近距離での対応や、複数人での飲食が多い業種の黒字の低下傾向が顕著となっています。
飲食店の経営の状況については、以下の記事もご参照ください。
データから見た飲食店経営の現況、廃業率は高い?
赤字経営(決算)になるとどうなる?
赤字経営になると、飲食店にとって以下のような影響が出ると考えられます。
資金繰りの悪化
赤字とは、入るお金よりも出ていくお金のほうが多い状態です。利益が出ないと、運転資金が不足する可能性があります。
赤字が続くことで仕入れや従業員の給与支払いなどが難しくなり、自転車操業に陥るリスクが増大します。
信用力の低下
赤字が続くと、信用機関からの評価が低下します。
そうなると、短気的な融資だけではなく将来への融資も受けにくくなり、事業拡大や設備投資が困難になるため、経営縮小は避けられません。赤字脱却のための大きな一手を打てない状況となります。
企業としての信用力の低下は、取引先との関係にも悪影響をおよぼす可能性が生じます。
経営者の精神的負担
赤字が続くと、経営者は大きなストレスを抱えることになり、精神的負担が出てくるでしょう。経営の柱である経営者が弱ると、店舗自体の存続も不安視されます。
そうなると、従業員の士気にも悪影響がおよび、離職者が増える可能性も高まってきます。
倒産のリスク
赤字経営が長期間続くと資金が枯渇し、倒産に追い込まれる可能性が増大します。
仕入れや給料支払いとなるキャッシュフローが滞り、運営不可能な状態に陥るリスクが高まってきます。
飲食店が赤字に陥る主な原因
飲食店が赤字に陥る主な原因としては、以下があります。
売上確保ができていない
日常的に売上が確保できないことが、赤字の最も大きな要因となります。
メニュー価格やオーダー内容が適切でないため客単価が低いと、材料費や手間とのバランスが悪くなり黒字化できません。
もとより来店客数が少ない場合、店舗運営費が賄えなくなります。原因として、集客力や販促力の弱さ、競合店の多さなどが考えられるかもしれません。
サービスや料理の質が低く、リピーター客が減少したことが根本的な要因の場合もあります。
無駄なコストが発生している
店舗運営において、仕入れ先選定に問題があり食材費が高すぎる、在庫管理に不備があり廃棄ロスが発生しているなど、無駄なコストが発生している可能性があります。
また、適切な人員配置やシフト管理ができていないことで、余分な人件費が発生しているケースも少なくありません。
店舗の立地や設備などが原因で、家賃や光熱費などの固定費が高額化している可能性もあります。
手元に現金が少ない
常時手元に現金がない、運転資金が不足しがちという場合、資金計画が不十分である可能性があります。
過剰な投資があったり、売掛金の回収が遅れていたりするときには、設備投資と回収計画について見直しましょう。
税金の支払いなどにより資金が不足する場合には、納税額の把握や準備が不十分なため返済計画が現実的でない可能性も考えられます。
経営環境の変化
近隣に大手チェーンなど競合店が進出する、立地場所が幹線道路から外れるといった外部的な要因が赤字の原因となる場合もあります。
近隣の企業が倒産すると、顧客として来店していた従業員が通ってこなくなるため売上が激減するおそれがあるので注意しましょう。
飲食店の閉店の理由や兆候については、以下の記事もあわせてご参照ください。
飲食店閉店理由には何がある?閉店を考慮すべき前兆は?
閉店の兆候をチェック!あなたのお店はいくつ当てはまる
飲食店が赤字から脱却するための具体的な対策
飲食店が赤字から脱却するためには、多角的なアプローチが必要です。主な具体策を紹介します。
売上拡大の施策
集客力の強化
来店客を増加させるために、集客力の強化を検討する必要があります。SNS、Webサイト、オンライン予約システムなどのデジタルマーケティングを活用し、集客チャネルの幅を拡大しましょう。
地域密着型のプロモーションも有効策です。例えば、地域のイベントへの参加、地域住民向けの割引やサービスなど、地元に根ざして愛される店舗づくりも有効的です。
また、リピーター客の獲得は集客戦略の要(かなめ)です。ポイントカードや会員制度の導入、顧客とのコミュニケーションの強化など、可能な限りの対策を検討しましょう。
メニューの開発・改善
顧客の嗜好や季節性を考慮したメニュー開発といったように、顧客ニーズに合わせたメニューづくりは差別化のうえでも重要です。
原価と販売価格のバランスを見直し、利益率の高いメニューの提案を図るのも手です。
限定メニューやセットメニューなど、顧客の購買意欲を高めるメニューは、新規客の呼び込みにも大きく貢献するでしょう。
価格戦略の見直し
競合店の価格やサービスを分析し、適切な価格設定を行うことで利益率の向上を目指します。このとき、来店客の属性に合わせて顧客が感じる価値に見合った価格設定を行い、満足度を高めることが大切です。
時間帯や曜日、需要に応じて価格を調整する、ダイナミックプライシングを取り入れるのもひとつの方法です。
コスト削減の施策
食材費の見直し
より良い条件で仕入れられる業者との取引は、店舗運営の継続に欠かせない要素です。
あわせて適切な発注量と保管方法による食品ロス削減を意識し、在庫管理の徹底を行うとよいでしょう。
また、食材の使い切りのためには、食材の無駄をなくす調理方法やメニューの開発も必要です。
人件費の見直し
繁閑の差に応じた適切なシフト管理で、適切な人員配置を行うことも大切です。そのなかで、業務フローの見直しやITツールの導入による業務効率化で、最低人員でまわせる仕組みを考えましょう。
また、従業員の教育・研修に力を入れることで、従業員のスキルアップによる生産性と顧客満足度の向上を実現させます。
固定費の見直し
固定費削減のためには、家賃や光熱費の削減に向けた交渉や省エネルギー対策が求められます。
不要部分に経費がかかっていないかを確認しながら、リース契約の見直しや資産の有効活用を考えましょう。必要に応じて外注費の見直しや内製化の検討も進めるとよいでしょう。
経営戦略の見直し
ターゲット顧客の明確化
自店の強みや特色を生かせるよう、ターゲット顧客を明確にすることが重要です。
ターゲット顧客の明確化ができれば、そこに合わせたマーケティングやメニュー開発を行えるようになります。
競合分析に基づく差別化戦略
競合店の強みや弱みを分析し、自店の差別化ポイントを明確にすることも大切です。
独自のサービスやメニューを提供し、競合との違いを打ち出せれば、集客力を強化できるでしょう。
経営情報の分析と活用
売上、原価、人件費などの経営情報を分析し、現状の課題を把握することは赤字脱却の大きな一歩です。
データに基づいて意思決定を行い、経営の効率化を図りましょう。
賃料の安い物件や小型物件に移店する
固定費の削減のためには、思い切って移転を視野に入れるのも有効策です。
賃料の安い物件や、アルバイトを雇わずに一人で運営できる小型の物件に移転をしたり、自店の特性によりふさわしい客層の立地に引っ越すといった手段があります。
そのほかのポイント
ほかにも、赤字を解決するポイントとして以下があります。
- 専門家の活用:経営コンサルタントや会計士などの専門家に相談し、アドバイスを受ける
- 補助金や助成金の活用: 飲食店向けの補助金や助成金を活用する
上記の対策を検討するも、外部要因などにより経営改善が見込めない場合には、体力があるうちに、営業を続けながら並行して居抜きでの売却も検討してみるとよいでしょう。
飲食店の経営について、以下の記事もご参照ください。
飲食店経営、資金繰りに困らないようにする方法はある?
借金には気をつけたい飲食店経営。借金を残さずに閉店するには?
状況を見極めて適切な対策を実施しよう
データが示すように、回復傾向にはあるとはいっても飲食店経営の置かれた環境はまだまだ厳しいのが現実です。長期に赤字が続けば、やがては通常の店舗運営が難しくなっていきます。できるところから着手し、少しずつでも赤字脱却を図っていかなければなりません。
一方で、事業の立て直しが困難と感じている場合には、早めの決断が賢い選択となるかもしれません。一度仕切り直して再出発をするのも、ひとつの方法です。
有利に店舗売却を進めたいときには、飲食店舗取り扱いのプロである居抜き売却市場にぜひご相談ください。