飲食店舗の移転・閉店・撤退に関するコラム詳細

飲食店の戦略的撤退、造作譲渡で閉店費用を抑えよう!

飲食店の閉店を決意した場合、閉店費用を抑えたいのは誰でも同じです。そこで考えたいのが、居抜き店舗として造作、設備などを売却する方法です。居抜きという方法ならば、原状回復工事費という大きな出費を抑えることができます。そこで今回は、物件の所有者・貸主と新しい借主との間で交わされる賃貸借契約とは別に、新しい借主(買主)と以前の借主(売主)との間で交わされる契約対象物件内の内装や厨房機器などの造作を新しい借主(買主)に譲渡するという契約、「造作譲渡契約」に焦点を合わせてご紹介します。

飲食店の閉店費用

まずは閉店にかかる費用をざっと確認しておきましょう

解約予告期間分の賃料、管理・共益費

一般的な賃貸借契約には解約予告期間が定めてあります。実際の期間については、賃貸借契約書を確認しましょう。すでに閉店していたとしても、解約するまでの期間の賃料、管理・共益費の支払いが必要になります。

水道・光熱費、リース料、中途解約違約金

厨房機器等をリース契約で入手している場合には、リース契約の期間中での閉店という事態が起こりがちです。リース契約は途中解約ができないことが多く、残りの期間のリース料や、途中解約違約金の支払いが生じます。また、引き渡しまでの水道代や光熱費も負担する必要があります。

従業員の給与(解雇予告手当)

従業員への解雇予告は30日以上前に行わなければなりませんが、即時解雇になった場合には、30日分以上の平均賃金を払わなければなりません。

原状回復工事費

構造や設備など状況によって、費用は大きく変わってきますが、坪あたり数万円はかかるでしょう。工事によって大量に発生する廃棄物は、原状回復工事業者が処分を引き受けてくれる場合がほとんどですが、自分で手配する場合には、処理費用が別途にかかります。

保証金の償却費

解約後に戻ってくるお金として保証金をあてにする人もいますが、賃貸借契約書に保証金償却の取り決めがある場合には、全額は戻ってきませんので注意が必要です。事前に賃貸借契約書を確認しておきましょう。
賃料の滞納があったり、原状回復工事が不十分だったりする場合、保証金から当該債務を差し引かれ、返還されなかったり保証金ではその金額を賄えず追加で請求されることがあります。

造作譲渡の魅力とは?

造作譲渡は、なんといっても閉店費用を大きく削減できるところが最大の魅力です。

  • 原状回復工事費が不要。
  • 工事の必要がないため、閉店作業期間を短縮することができる。
  • リース物件がある場合に、リース契約を引き継いでもらうことができるならば、違約金の発生を回避できる。(リース残債等を造作譲渡代で清算することも可能です。)
  • 解雇予告期間内に引き渡しができれば、空賃料を節約することができ、保証金も早くに戻る。
  • 有償で造作譲渡できれば、代金を手にすることができる。

なお、「造作売買契約」、「店舗資産譲渡契約」、「飲食店舗付属資産売買契約」、「飲食店舗付属資産譲渡契約」などの名称はすべて、「造作譲渡契約」と同じ内容を指していると考えて間違いありません。

造作譲渡の流れ

有利な条件での造作譲渡を希望するならば、実績のある居抜き店舗専門の業者に仲介をお願いするのが1番よいでしょう。以下、業者を利用した際のおおまかな流れです。

  1. 業者に問い合わせ(相談料無料としているところがほとんどです)
  2. 物件を査定してもらう(無料で査定結果が得られるところがほとんどです)
  3. 状況や要望に合わせた提案を受ける(物件所有者・貸主との交渉もお願いできる)
  4. 買い取り希望者を探してもらう(秘密裏に行いたい場合に配慮してもらえる)
  5. 買い取り希望者の視察(内見)手配をしてもらう
  6. 買い取り希望者の申し込みを受けてもらう
  7. 買い取り希望者の審査、契約内容の調整をしてもらう
  8. 契約書を作成してもらう(安心安全な取引)
  9. 契約の締結(立ち会ってくれる)
  10. 引渡しと造作譲渡料の決済(引き渡し時の動作確認などもやってもらえる)

造作譲渡の注意点

トラブルに巻き込まれることなく、スムースに造作譲渡を実施するためには、いくつか注意しておきたいポイントがあります。

物件所有者・貸主の承諾を得る

以下の3点について、物件所有者・貸主の承諾を得ておくことが重要です。場合によっては、管理不動産会社との協議が必要な場合もあります。居抜きとなると難色を示す物件所有者・貸主もいますので、居抜き専門業者に交渉を任せると安心でしょう。

  1. 賃貸借契約書に原状回復義務が定められていても、原状回復工事を行わないこと
  2. 解約予告期間に関わらず、新テナントへ名義を変更すること
  3. 内装設備や厨房機器を新テナントへ引き継ぐこと

造作譲渡に含まれるもの(範囲)を明確にしておく

通常、造作譲渡料の内容に関して「一式」と記述されている場合、内装、厨房設備、トイレ、冷暖房設備などが含まれますが、リース契約をしている設備や、物件所有者・貸主から無償で提供されていた物などは自分の持ち物ではありませんので当然、含まれません。家具、食器、音響設備、キャッシュレジスターなどを含めるかどうかについては判断が分かれるところなので、造作譲渡品はきちんとリストアップして明確にしておきましょう。譲渡の過程で出てくる不用品の処分費用についても、どちらが負担するかはっきりさせておくと、後々のトラブルを回避することができます。

厨房機器などの故障・不具合は申告しておく

厨房機器に故障があったり、排気ダクトや冷暖房機器が不調であったりすることはよくあることです。買い取り希望者に事前情報として伝えることを怠らないようにしましょう。通常は契約前に稼働確認作業が入りますが、後のトラブル発生を防ぐためにも、事前に申告しておくことが大切です。

造作譲渡契約書を作成する

どんなに忙しくとも、造作譲渡契約書は後のトラブルを防ぐ為にも作成しましょう。造作譲渡品リスト、造作譲渡料、引き渡し期日に合意が得られた段階で、居抜き売買専門業者などの立ち会いのもと、契約書を交わすようにしましょう。契約書には、「契約解除の条件」など盛り込むべき事項がいくつかありますので、自分で契約書を作成する場合には、内容について、居抜き売買の専門業者などに助言を仰ぐことをおすすめします。

引き渡し時期の調整が必要

1日でも早く譲渡完了させたい事情があったとしても、買主側にも準備期間が必要なため、即刻引き渡しというわけにはいかない場合があることを認識しておきましょう。場合によっては、解約日までに引き渡しができるように、物件所有者・貸主への解約の通告もタイミングを計るとよいかもしれません。居抜き専門業者に入ってもらっている場合にはタイミングについても助言してくれるでしょう。また、造作譲渡が急を要する場合にも居抜き専門業者に相談すると、適切な買い手を探してもらうことができるでしょう。

撤退は余力のあるうちに!

多くの飲食店は、より良い物件に移転したり、立ち退きにあったり、引退することになったりと、いずれ何かしらの理由で現在の店舗を閉じる日がやってきます。経営難で閉店にいたるにしても、出店と同様に経営戦略のひとつ、戦略的撤退と考え、金銭的にも時間的にも余力のあるうちに、有利な条件で話を進めるようにもっていってください。居抜きで売却ならば、時間的な余裕をもって売却先を探すようにしましょう。事前に計画を立て進めていく方が買主を見つけやすく、また解約日が迫っていると足元を見られる可能性が高くなるからです。それでも、自分で売却先を探すのは困難な場合が多いので、良い条件の買主を探したいのであれば、居抜き物件専門の業者をあたるのがおすすめです。インターネット上でも専門サイトがあるため、積極的に活用するとよいでしょう。