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造作譲渡は交渉次第で高額売却が可能?コツやポイントを解説

日々働き慣れ親しんだ店舗を手放すのはつらいことですが、新しい次のステップの足場とするためにも高額売却を目指したいものです。居抜き物件として交渉を行う場合、できるだけ良い条件で進めるためにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここでは造作譲渡の交渉をするために、押さえておくべきコツや知っておきたいポイントを解説していきます。

造作譲渡の交渉をする前に押さえておくべきこと

造作譲渡の交渉をする際に事前にリサーチや準備をしておきたい項目は以下です。

造作譲渡の交渉の相手を知ろう

造作譲渡を実施するときには、まず相手が何を求めているのかを知ることが重要です。
造作譲渡を希望するときに最も考えられるのは、同業種で開業したい人です。居抜きで今ある設備を流用することを想定しているため、内装や機器類などのメンテナンス状態が条件の良し悪しを大きく左右することになります。
交渉に入る前にできる限り手をかけておくと、その分有利に進められます。
もうひとつのタイプとして挙げられるのが、どうしてもその立地を手に入れたい人です。この場合には、内装や設備は関係ありません。一度スケルトンにしたり取り壊したりすることを想定しているため、できるだけ安く買おうとする傾向があります。
ただし、立地自体に魅力があるときには、競争相手が出現することが予測され、難化の可能性が出てきます。

交渉前の準備は?

交渉前に行っておく準備としては、リース品のチェックがあります。リースが閉店時に継続している場合、契約打ち切りとともに物品が引き上げられます。そうなると設備を失うことにより、造作の価値が下がってしまいかねません。
設備によっては買い取りにしておく方が有利になる場合もあるため、リース契約の条項を確認して支払い負担がどれくらいになるのかを計算しておきます。交渉条件とのバランスを図り、できるだけ有利な展開となるようにする必要があります。
造作譲渡は自分だけで行うのが困難なので、居抜き店舗専門の業者に依頼することになるかと思いますが、十分に厳選する必要があります。多くの業者に声をかけた方が、それだけ買主が増えて価格を上げられそうに思えますが、複数に依頼すると情報が広まって価値が低下するという恐れもあります。
実績があり、信頼のおける業者に絞って依頼するのがおすすめです。

造作譲渡料に含まれるもの・含まれないもの

造作譲渡料とは?

居抜き物件売却の際によく理解しておかなければならないのが、「造作譲渡料」です。
造作譲渡料とは、店舗内に残されているものの買取り費用ですが、内装や備品の価値だけではありません。それらの経年や設備性能がそれらを決めるだけでなく、集客力や立地といった店舗そのものの価値に大きく左右されます。
造作譲渡は一般的な建物自体の取引でなく、その店舗での営業権の売り渡しとしての要素もあります。つまり、造作譲渡料は権利金のひとつとして考えると良いでしょう。

造作譲渡料の対象は?

造作譲渡料の「造作」のもともとの意味は、“建物の内部の仕上げ工事。天井・床板・建具・棚・階段などを取り付けること”(三省堂 大辞林 第三版参照 https://www.weblio.jp/content/%E9%80%A0%E4%BD%9C)と記されています。店舗売却における造作譲渡では、さらに付帯する内装や設備も含まれます。
一般に交渉時の見積もりでは、造作を一式として扱います。その内容としては、主に以下のようなものがあります。

  • 造作物:天井・床・建具・内装全般
  • 設備:電気配線、空調設備、排気ダクト、給排水、看板など
  • 機器類:電話設備、通信機器、各種厨房機器、レジスター、食券販売機など

契約にもよりますが、一般的には造作譲渡料の中には調理器具、食器類などの備品は含まれないことが多いようです。

高く売却するコツや時期は?

高く売却するためにはどういったことを押さえておくと良いのでしょうか? ポイントや手順についてチェックしていきましょう。

周辺情報を収集する

納得のいく造作譲渡を行うためには、十分な周辺調査がカギです。
例えば、同様の居抜き物件の募集が周辺に多いときには早急に交渉をまとめようとせず、時期を遅らせるといった対応が必要です。売却価格は、需要と供給のバランスによって大きく変動します。
居抜き物件が多く売り出されているときに慌てて売ろうとすると、周囲の安い物件につられて相手の言い値で契約してしまう可能性も出てきます。周辺の状況に引きずられないようにする姿勢が、自店舗の適正な価値評価につながります。
豊富な知識があることを示せば、安易な値引きをしてくることはありません。詳細なマーケティングは、強い交渉材料となります。

買い手候補に良いイメージを与える

居抜き物件は空き店舗でも開店後のイメージを伝えられますが、できれば営業中に案内するとより購買意欲を刺激できます。
実際に人が入って動いているのを見れば、買い手候補は営業のイメージを膨らませ、「自分だったらこうする」といった具体的な感想を持つようになります。ただし、営業中でも店内が閑散としているようでは逆効果となるため、案内する際には時間帯などを選ぶ工夫が大切です。
また、清潔感をアピールするのは、店舗売却の基本です。目に付く汚れはもちろんですが、交渉前に細部までチェックをしておく必要があります。窓ガラスの汚れやレースのカーテンなど、自分でできる部分だけでも手を加える努力が、大きな成果につながります。

契約後に賃貸借契約の解約を

オーナーとの契約内容にもよりますが、新規の買主との契約が成立してから賃貸借契約の解約をするのが望ましいといえます。
賃貸借契約の解約によって退去する期限が確定してしまうと、それまでに売ってしまわなければという意識が働いて売却価格に影響する可能性があります。賃貸借契約の解約をすると、原状回復によりスケルトンの状態に戻す必要が生じます。原状回復の条件により焦りが生じると、安心して売買交渉に臨むことができなくなります。居抜き物件として造作譲渡ができれば、原状回復も不要となります。
造作譲渡の買手候補が確定したあとに賃貸借契約の解約を行えれば、そうした心配はありません。店を閉めるからといって、早々に賃貸借契約の解約をすることのないように注意が必要です。

造作譲渡交渉に関する注意点

トラブルや後悔につながらないためにも注意点を押さえておきましょう。

造作物の所有権の確認をしっかりと

造作譲渡は内装や設備をそのまま受け渡す契約ですが、当然ながら所有権のないものは譲渡できません。
先にも挙げたようにリース契約になっている物品には注意が必要です。加えて物件所有者・貸主の所有となっているものがないか、契約時の条項の詳細まで確認しておくようにしてください。
過去には誤って物件所有者・貸主の設備を取り壊した事例も見られます。そうなると、補償として余計な負担が生じることになります。
設備を処分する際には不用品であることが確定した時点で念入りに所有権を確認し、それから実施するようにします。
自身の所有であることが明確であっても、冷凍冷蔵庫、製氷機、コールドテーブルなど高額商品を売却すると店舗としての魅力が下がる可能性があります。
現金化するよりも交渉に利用した方が有利な場合があるので、設備の処分についてはしっかりと見極めていきましょう。

不用品の処分についての負担取り決め

造作譲渡は後にトラブルが発生するケースは少なくありません。
売主と買主の見解の相違によってトラブルが大きくならないよう、十分に相互の確認をしておくようにします。造作譲渡をする内容については、譲渡リストを明確に作成し、詳細までしっかりと詰めておくことが重要です。
店舗内の内装・設備をまとめて譲渡する際には、不用品処分料の分担を後から請求されないよう条項として契約書に記載します。
一般的に「一式」として記載された場合には、売主に処分費用の負担は生じません。相手から不用品の処分についての交渉があった場合には、負担の取り決めをきちんと行っておくことが後のトラブルを回避します。

焦らず状況を判断しながら準備を行おう

造作譲渡をするときには、周辺の居抜き物件の売買状況や買い手市場の動向などの情報を収集しておくことが大切です。相手の希望がどのようなものかをとらえることで、高額売却への交渉も可能です。売却を急ぐあまり相手の言い値で売ってしまうと、後悔することにもなりかねません。店を丸ごと好条件で譲渡するためには、焦りは禁物と心得て交渉に臨みましょう。
造作譲渡を検討していて信頼できる業者に相談したいとお考えの場合には、ぜひこちらまで。
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