飲食店舗の移転・閉店・撤退に関するコラム詳細

飲食店を閉店するなら最初にやるべきことは?閉店費用を抑えるためには?

飲食店の閉店を考えたときに、何から手を着けたらよいのか悩む人も多いでしょう。物件を借りているのならば、賃貸契約を解約しなければなりません。厨房機器も処分しなければなりません。手順を間違うと、面倒なことになりそうです。そもそも、どのくらいの費用がかかるのでしょうか? そこで今回は、閉店を考える場合に、最初にやるべきことからご紹介します。

閉店を考えるなら最初にやるべきことは?

閉店するためには、さまざまな手続きが必要になります。一番の大仕事は、店舗を引き払うことでしょう。そのために、真っ先にやるべきことは、賃貸契約書の内容の確認です。
テナントとして入居している場合には、退去することを事前に物件貸主・所有者に告げることが定められています。一般的に3~6か月前に予告しなければならないことが多いようですが、お手元の賃貸借契約書で実際の解約予告期間を確認しましょう。
店舗を引き払う際に最も費用がかかるのが、店舗の原状回復工事です。賃貸契約書に定められている原状回復条項をよく確認しましょう。どの程度の原状回復が必要かによって、工事費が大きく変わってきます。原状回復の状態の認識にズレがあるとトラブルの元になりますので、内装工事業者の見積もりの際には、物件貸主・所有者や管理会社の人にも立ち会ってもらうとよいでしょう。

閉店コストを見積もる

閉店は意外に費用がかかるものです。賃貸契約書やリース契約書をもとに、ざっと閉店コストを見積もりましょう。

  • 解約予告期間分の賃料

営業を終了したとしても、賃貸借契約書に記されている解約予告期間内の賃料の支払いが必要。

  • 水道・光熱費、リース料、中途解約違約金

厨房機器にリース契約のものがある場合には、リースの解約。中途解約ができるかどうか、残りの期間のリース料や、中途解約違約金の額などについても調べる必要がある。
また、退去するまでの水道代や光熱費も負担する必要があるため、簡単に見積もっておく。

  • 従業員の給料(解雇予告手当)

従業員を雇っている場合には、解雇予告を30日以上前に行う必要がある。つまり。30日を満たさずに解雇する場合であっても、即時解雇するのであっても、少なくとも30日分の平均賃金を払わなければならない。

  • 原状回復工事費

細い路地裏にあるか、駐車スペースのある広い道路に面しているか、1階にあるか、2階以上にあるかなどの店舗の立地や、建物の構造によっても費用は異なるが、一般的に坪あたり数万円から10万円程度かかることが多い。廃棄物の処分は、原状回復工事業者が引き受けてくれる場合がほとんどだが、自分で手配する場合には、処理費用も試算しておく必要がある。

保証金の返金は過度に当てにしない

物件取得時に支払った礼金は戻ってきませんが、額が大きな保証金は解約時に戻ってくるということで、資金繰りに保証金を当てにする人もいます。しかし、賃貸借契約書に保証金償却の取り決めがある場合には、全額は戻ってきませんので注意が必要です。一般的には保証金の20%、あるいは2か月分の賃料相当額が償却費として設定されていることが多いようですので、賃貸借契約書をよく確認しましょう。賃料等の滞納があったり、原状回復工事が不十分だったりする場合にも、保証金が減額されたり、返還されなかったりすることがあります。
また、返金時期についても、賃貸契約書で確認しておいてください。引き渡し日に入金があると思い込んでいると当てが外れることになります。

閉店コスト削減に有効なのは?

閉店コストに占める割合が大きいため、昨今、飲食業界で増加しているのが「居抜き」あるいは「造作譲渡」と呼ばれる取引です。内装や厨房設備、冷暖房機器などの造作・備品を一式、次のテナントに譲り渡す方法です。通常は有償で譲渡するので、うれしい入金となります。そのほか、以下のようなメリットがありますので、居抜きをぜひ考慮したいところです。
原状回復工事が必要なくなるので、そのための工事費用が一切不要になります。これは大きな費用削減になると同時に、工事期間が必要ないため、営業終了後から引き渡しまでの空賃料期間を短縮することにもつながります。
造作一式引き渡し時に、新テナントは物件の貸主・所有者と賃貸契約を結ぶので、解約予告期間にかかわらず、その時点で賃料の支払いが終了します。空賃料期間が短縮されるため、その分の費用が削減できます。
リース物件がある場合には、新テナントにリース物件の契約も引き継いでもらうことができれば、中途解約違約金を支払わずにすみます。
ただし、造作一式は、新しければ高く売れるというものではありませんので、ご注意ください。

居抜き専門業者を選定する

居抜きで店をたたむことを決意したならば、何よりも先に居抜き店舗の専門業者に問合せをしましょう。居抜き売却をするならば、物件貸主・所有者や管理会社に了承を取ることが不可欠です。ところが、居抜きには難色を示す物件貸主・所有者が少なくありません。そのため、経験豊富で交渉術にたけた居抜き店舗の専門業者に物件貸主・所有者や管理会社に了承を取る交渉を任せられると安心です。また、居抜き売却する場合には、解約予告期間以内に買主を見つけ、譲渡の契約書を交わし、引き渡ししなければなりません。そこで、解約予告のタイミングについても、居抜き店舗の専門業者に相談しながら無理なく進めることができます。
現在は、どこの専門業者も無料で見積もりや相談を受けてくれますので、自分に合ったところを見つけてください。選択のポイントを以下にご紹介しましょう

  • 独自の募集システムがある。
  • 実績とノウハウがある。
  • 店の現状の話をよく聞いてくれる。周辺店舗や従業員には秘密裏に進めたい場合にも、その意を組んでくれる。
  • 聞き慣れない専門用語について、丁寧に説明してくれる。
  • 担当者への連絡がつきやすい。
  • 扱っている物件数が多い。
  • 造作譲渡の契約書を作成し、締結に立ち会ってくれる。

現況を理解してもらわなければ、的確なアドバイスももらえませんので、まずは親身になって話を聞いてくれるところを探してみてください。

閉店のための手続きの流れ

それでは、閉店するために必要な手続きも簡単に見ておきましょう。これは、個人事業主の場合です。また、時系列的順番は必ずしもこのとおりというわけではありません。閉店のためのそれぞれの作業のタイミングについても、居抜き店舗の専門業者に、店の状況に合わせたアドバイスをもらいましょう。

  1. 居抜き専門業者に依頼
  2. 借入金については各金融機関に相談
  3. テナントオーナーと不動産管理会社へ解約の告知
  4. 従業員への解雇の通知
  5. 取引先への連絡
  6. お客様への告知
  7. 造作譲渡の契約の締結
  8. リース物件の精算とレンタル品の返却
  9. 賃貸契約の解約
  10. 電気、ガス、水道の解約
  11. 物件の引き渡し
  12. 保健所、警察署、税務署など行政機関への届け出

手続きや届出のためのスケジュールも作っておこう

飲食店を廃業するためには、開業と同様に種々の届出が必要になります。廃業日から5日以内、10日以内に提出が求められているものもあるので、スケジュール表を作成しておくとよいでしょう。届出書や申請書の用紙はインターネットで入手できるものが多いので、時間があるときに早めに準備しておくことをおすすめします。

参考:あなたの店舗をたった10秒で査定します!!|居抜き売却市場