飲食店舗の移転・閉店・撤退に関するコラム詳細

飲食店閉店のお知らせ、方法とポイントを押さえよう

どこかのお店で「閉店のお知らせ」を目にしたことがある人は多いでしょう。自身が飲食店の閉店を決意し、何をしなければならないのかリストアップするなかで、「閉店のお知らせ」というものに思い至る人もいるのではないでしょうか。今回は、飲食店の閉店のお知らせに焦点を合わせ、お知らせの必要性から、方法、盛り込むべき内容、あいさつ文のポイントなどをご紹介します。

誰に対して閉店のお知らせが必要?

閉店を決めたあとには、物件所有者・貸主や従業員に通知しなければならないのは当然として、閉店のお知らせはどうすればよいのでしょうか。開店する際のお知らせの重要性は分かるとしても、誰に対してお知らせをしたらいいのか分からないという人がいるかもしれませんね。そこで、閉店のお知らせが必要な相手というところから考えてみましょう。

  • 取引先

取引がいつまでになるのか取引先に連絡する必要がありますが、それとは別に、あいさつ状を出すのが礼儀と言えるでしょう。

  • お客様

店舗の移転や、その店は閉店しても多店舗経営のため、残りの店舗や移転後の店舗に誘導したい場合、あるいは一旦閉店するものの近い将来に再開の予定があるなどの場合には、現在のお客様をつなぎとめておくためにも、今後の情報を載せたお知らせを作らなければならないでしょう。
ミールクーポンやコーヒー券、ボトルキープなどのシステムを導入していた場合には、閉店前に使用していただくよう促すためにも、早めのお知らせが必要です。
なかには、経営不振による閉業ということで、あいさつどころじゃないという人もいるかもしれません。それでも、今まで来店してくださったお客様に感謝の意を示す意味で、閉店のお知らせを作ってはいかがでしょうか。閉店する前にもう一度、あの料理を味わいたいというお客様がいらっしゃるかもしれません。

閉店のお知らせの方法

閉店を知らせる方法には、さまざまなものがあります。取引先へは、あいさつ状を手渡ししたり、郵送したりするとよいでしょう。
ここでは、お客様向けにいくつかの方法をご紹介しますので、お店の状況に合わせて組み合わせるとよいでしょう。

店内ポスターで告知

最も手軽な方法のひとつが、店内に閉店のお知らせを貼り出すことです。誰の目にもとまる場所に貼り出せば、少ない労力で、来店されたお客様にダイレクトに知らせることができます。

会計時にカードを手渡し

会計時に、閉店を知らせるカードを、ひと言添えてお客様にお渡しする方法もあります。特に常連客に感謝の意を表明することができる良い方法です。

店頭ポスターで告知

店内ポスターと同様に、労力は少なく、広く告知することができる手軽な方法です。移転先や他店舗に誘導したい場合には、住所や地図を入れ込むことができるので活用しましょう。店舗の立地によっては道行く人にもアピールできるので、閉店前の駆け込み需要が期待できるかもしれません。

手紙やメールであいさつ

来店の頻度が高くないお客様は、店内外のポスターを見る機会がないかもしれません。そのようなお客様には手紙やメールで閉店のお知らせをするとよいでしょう。
お客様の取引先の接待や社内の歓送会など、社用で使っていただいていた場合にも、メールや手紙であいさつしておくと、心証を良くして閉店することができるでしょう。

ホームページで告知

ホームページを開設している場合には、ホームページにも閉店のお知らせを出しておきましょう。

SNSで告知

お店のアカウントをSNSで持っている場合には、閉店についても、手続き等に支障のない範囲で情報発信するとよいでしょう。気軽に発信できるからといって、感情的にならないように気をつけましょう。

閉店のお知らせのタイミング

次に、閉店のお知らせをするタイミングというものについて考えてみましょう。
閉店作業には、実にさまざまなことが含まれます。なかでも気をつけたいのが、物件所有者・貸主への解約予告のタイミングです。閉店についても物件からの退去日が正式に決まるまでは、口外を避けましょう。
物件の引き渡し日については、解約予告期間を考慮したうえで決まります。そこまでは営業の有無にかかわらず家賃の支払いが発生します。空家賃の発生を嫌う人は多いですが、現在、飲食業界で注目されている造作譲渡(居抜き売却)を考慮したいのならば、退去日までに物件所有者・貸主の承諾の上、買主を見つける必要があります。迅速に買主が決まれば、空家賃の期間も合意解約をすることによって短縮されます。
居抜き売却のためには、買主を早く見つけるためだけではなく、物件所有者・貸主への適切なタイミングでの通知や、居抜き売却の承諾をとるため、居抜き物件専門の業者に最初に相談することがすすめられています。取引先やお客様への閉店を知らせるタイミングについても、一般的には、退去日の1~2ヶ月前とされていますが、お店の状況に合わせたタイミングを業者に助言してもらうとよいでしょう。

お知らせに記載すべき内容は?

閉店のお知らせに載せたい情報についても見ていきましょう。知らせる相手が取引先かお客様か、どのような媒体でのお知らせかを鑑みつつ、記載すべき内容を考えましょう

欠かせない項目

一般的に、以下の3点は記載すべきとされています。

  • 閉店の事実
  • 感謝の言葉

また、閉店日については、在庫の材料がなくなった時点で終業するという方法もあります。その場合には、閉店予測日についてこまめに情報を更新しておくとよいでしょう。

プラスα

上述した3点に加え、閉店理由を入れる場合も多くあります。SNSならば、写真投稿で閉店を呼びかけるといったこともありでしょう。また、廃棄処分しなければならない食器や鍋のような調理器具などがある場合には、駐車場や店内でのガレージセールを企画し、そのお知らせを加えるのもよいでしょう。

あいさつ文:取引先

取引先へのお知らせは、たとえ気心が知れた仲であってもフォーマルな文章を用意するのがおすすめです。文面については、定型のものがインターネット上にあるので、それらのなかから選んで利用すると無難です。
基本的にはまず、「拝啓 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます」のように始めます。次に「さて このたび諸般の事情により」「さて 突然ではございますが」「さて このたび健康上の理由により」などの起こし言葉に続いて「来る〇月〇日をもちまして閉店することになりました」と、閉店する事実を述べます。
続いて、「創業以来〇年にわたり 皆様方には並々ならぬご厚志を賜り誠に有難く心より感謝申し上げます」といった感謝の意を表します。場合によっては「感謝申し上げますとともに、ご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます」とおわびを添えるのもよいでしょう。
最後は、「皆様方のますますのご健勝とご発展をお祈り申し上げます」に続いて、「略儀ながらまずは書中をもちまして、閉店のご挨拶とさせていただきます 敬具」と結ぶ形になります。
もちろん、店舗移転の場合や近い将来に再開予定がある場合には、それに合わせた文章にアレンジしてください。

あいさつ文:顧客

お客様への閉店のお知らせには、決まったフォーマットというものはありません。記載すべき項目を押さえつつ、業種、お店の雰囲気、自分のスタイルに合わせて自由な形でお知らせするとよいでしょう。もちろん、さまざまな定型のフォーマルなあいさつ文がありますので、媒体やお客様の属性に合わせて活用するのもよいでしょう。
以下、お知らせの方法に合わせたアドバイスです。

店頭、店内表示

フォーマルに、あるいはフランクに、自分のスタイルに合わせて作るとよいでしょう。パソコンで作ってプリントアウトする手がありますが、手書きもまた、人柄がにじみ出てよいものです。店内のお知らせには、お客様がメッセージを書き込めるようにしておくといったアイデアを凝らす余地もありますので、ちょっと考えてみるのもよいでしょう。

会計時にお渡しするカード

会計時にお渡しするカードも、文面はフォーマルなあいさつがふさわしい場合が多いでしょう。あいさつは印刷であっても、手書きでお客様のお名前や簡単なあいさつを書いておくと、好印象が残るでしょう。

メールや手紙

メールや手紙もフォーマルなあいさつ文が期待されるでしょう。こちらも、お客様がよく召し上がった料理といった思い出にまつわる文章を加えると、心のこもったあいさつとなります。

好印象を残した閉店を心掛けよう

閉店と同時に廃業という場合であっても、後足で砂をかけるような行為は慎まねばなりません。お世話になった取引先にはきちんとあいさつをし、例えほんの少しの間であっても、時間をともに過ごしたお客様にも感謝をして、お互いに好印象を残した状態でお店を畳みたいものです。自分のお店らしい閉店のお知らせを考えてみましょう。