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原状回復と現状復旧の違いとは?必要なケースや具体的な手順を紹介

店舗の移転や撤退をする際、「原状回復」や「現状復旧」という言葉をよく耳にしますが、その意味を正しく理解している店舗事業者は意外と少ないのではないでしょうか。どちらも言葉も物件をきれいな状態に戻すことを指しますが、意味合いが異なります。また、ほかにも類似した言葉が多く存在します。いずれも店舗事業者にとって、退去時の物件の状態にかかわる重要な用語なので、意味を正確に把握して適切な対応をとることが求められます。

今回は、「原状回復」と「現状復旧」などの紛らわしい表現について詳しく解説します。関連して原状回復工事についてもご紹介していきます。

原状回復と現状復旧とは?その他の類似用語との違い

原状回復や現状復旧といった用語は、物件を借りる際や退去する際によく聞くかと思います。似た用語がさまざまあるので、それぞれ解説をします。

「原状」と「現状」の違い

原状回復や現状復旧の意味を理解するためには、まず「原状」と「現状」という2つの基本的な考え方を把握することが重要です。

  • 原状

「原状」とは、元の状態に戻すことを意味します。店舗物件の場合は、建築当初のスケルトン状態(建物躯体のみで、内装・設備等が一切ない状態)のことを指すことが多いです。割合は少ないのですが、もともと事務所仕様の物件の場合もあり、その場合は、事務所仕様に戻すことが求められることになります、これらは物件の「スタートライン」とも言える状態です。

  • 現状

「現状」とは、現在の状態のことを意味します。建築関連では、物件が現在どのような状態にあるかを指し、物件の利用期間中に生じた変更や劣化を含む、現時点での物件の全体像を示します。例えば、壁に追加されたペイントや、床の傷、設備の老朽化などが「現状」に含まれます。

物件の退去時のトラブル回避に直接関わってくるため、店舗事業者は「現状」と「原状」の違いを正確に理解し、適切な対応を行う必要があります。

「復旧」「復帰」「回復」の違い

「復旧」に類似した言葉として「復帰」や「回復」もあります。これらは似ているようでいて、それぞれ異なる意味合いを持っています。店舗事業者が物件の状態を適切に把握して正確に対応をしていくためには、これらの違いを明確に理解することが重要です。

  • 復旧

復旧とは、何らかの障害や問題が発生したあと、物件や設備を正常な状態に戻す過程を指します。例えば、自然災害による被害からの復旧作業や、故障した設備の修理を行い、以前の機能を取り戻す行為がこれに該当します。

  • 復帰

復帰とは、物件や人が以前の状態や地位に戻ることを意味します。事業用物件の文脈においては、特定の用途や機能が一時的に中断されたあと、元の用途や機能に「復帰」する状況を指すことも少なくありません。この場合、物的な修復だけでなく、機能的な復帰も含まれます。

  • 回復

回復とは、失われた状態や能力が元に戻ることを指します。これは物件の状態だけでなく、事業の健康や経済的な状況の改善といった意味合いも含みます。例えば、市場での位置づけや収益性の「回復」といった形で使われることがあります。

物件の状態を説明する際や退去時には、これらの用語を適切に用いることが求められます。それぞれの意味の違いを理解し、正確なコミュニケーションを行うことが重要となります。

原状回復や現状復旧など、その他の類似用語の意味

物件を借りる際や退去する際において、「原状回復」「現状復旧」「原状復帰」「現状復帰」などの意味を正しく理解しておくことは重要です。「復旧」「復帰」「回復」の基本的な用語の違いを把握したうえで、さらに類似する表現にも目を向ける必要があります。

  • 現状復旧

物件や設備が現在抱えている問題や障害から正常な状態に戻すことを指します。主に短期的な修正や修理を意味し、物件を使用可能な状態に保つことが目的です。

  • 現状復帰

地震や火災などの災害等で、物件が一時的に失った特定の用途や機能を再び有する状態に戻すことを意味します。物件の機能的な面の復帰が主な目的です。

  • 現状回復

「今の状態に戻す(回復する)こと」となり、言葉の意味が成立していないため、誤用の表現です。現状復旧、現状復帰、または原状回復の間違いかと思われます。

  • 原状復旧

物件を借りた当初の状態、つまり「原状」に戻すことを指します。主に長期的な視点での修復や改善を意味し、物件の基本構造や機能を維持することが目的です。

  • 原状復帰

物件が契約開始時に持っていた機能や用途に戻ることを指します。物件の使用目的を原点に戻すことに重点を置いています。原状復帰は建設用語であり、「原状回復」と同じ意味を持ちます。

  • 原状回復

物件の物理的な状態や、外観を契約開始時の状態に戻すことを指します。長期間にわたる使用や自然の経過による変化からの回復が含まれます。原状回復は法律用語で、主に物件の賃貸借契約の際やテナントの退去時によく使われる言葉です。意味としては、建設用語である「原状復帰」と同じです。

これらの用語は、物件の状態に対し適切な対応をする際に正確な情報を伝えるうえで不可欠です。

原状回復工事とは?原状回復工事が必要な範囲

店舗の移転や撤退をする際、通常は、現在、店舗として借りている場所を建築当初のスケルトン状態(もともとが事務所仕様の物件であれば事務所仕様)にする必要があります。その工事を「原状回復工事」と言います。原状回復工事はどこまで必要なのか、工事の箇所や内容などについて解説します。

原状回復工事とは?

原状回復工事とは、賃貸物件を建築当初のスケルトン状態(もともとが事務所仕様の物件であれば事務所仕様)に戻すために行う修繕や改修のことを指し、賃貸契約終了時に物件を次のテナントに貸し出すためにあるべき状態に戻すために行われます。この修繕や改修には壁紙の張り替えや床の傷の修復などが含まれます。

なお、賃貸契約では、原状回復の範囲や条件が定められており、長期間の使用による自然な劣化は原状回復の対象外とされることがあります。

ただし、事業用物件の場合は、借主の事業内容によって損耗状態が異なるため、原状回復はすべて借主が行います。その際、借主が費用をすべて負担する契約が一般的です。

原状回復工事は、賃貸人や不動産会社の指示のもと専門の工事業者が担当します。工事内容や費用については、物件の状態や契約内容によって異なってきます。賃借人は、契約時にこれらの条項の内容を理解し、退去時には賃貸人や不動産会社と物件の状態を確認し、必要な工事の範囲や費用について話し合うことが大切です。

【店舗事業者向け】原状回復工事が必要な範囲

原状回復工事は、基本的には「物件を契約する前の建築当初のスケルトン状態(もともとが事務所仕様の物件であれば事務所仕様)に戻す」ことが条件です。店舗の場合は、どこまでがその対象範囲かは賃貸借契約書に記載されている場合がほとんどです。

一般的には、「内装、外装の解体、撤去」「厨房設備、管理設備、電気系統、水回り設備等の撤去」「天井、床、クロスの塗装、張り替え」などです。具体的に見てみましょう。

  • 床や壁などに損傷がある場合

出店する業態の内装工事工事が原因で、床や壁に損傷が生じた場合、退去時に原状回復が必要となります。

  • 設備の改変等がある場合

特殊な設備導入のための電気配線変更や空調設備の追加など、設備の改変が物件の構造に影響を及ぼした場合、これを元に戻す作業が求められます。

店舗の看板やロゴを取り付ける過程で外壁に損傷を与えた場合には、契約終了時に修復が必要です。

店舗を退去する際には、物件を原状回復するための工事が求められます。賃貸借契約時に、原状回復に関する条項を確認し、改装や設備導入前には不動産会社や賃貸人と許可されている改変の範囲を明確にしておくことが大切です。

居抜き物件の原状回復工事は必要?

居抜き物件として退去する場合、基本的には原状回復は必要ありません。しかし、入居時の賃貸借契約の内容によっては、工事が必要な場合もあります。

退去手続きを進める前に、賃貸借契約書に記載してある退去時の原状回復範囲を把握する必要があります。

飲食店の居抜き物件に関する原状回復工事の内容やポイントについては、以下の記事でも紹介しています。
飲食店撤退の際の原状回復工事とは?工事は回避できる?

居抜き物件で起こりやすいトラブルとは?事例とその対策を紹介

また、店舗向けの物件では原状回復工事を実施したうえで「スケルトン渡し」が条件とされることもあります。飲食店のスケルトン工事について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
飲食店の「スケルトン工事」に詳しくなろう!

原状回復工事をする際の手順

店舗事業者が原状回復工事をする際には、しっかりと計画を立て、その計画に従い段階的に進めることが重要です。以下のような手順で進めるのが理想です。

(1)原状回復の範囲の確認

賃貸借契約書の内容を再確認し、原状回復の具体的な範囲を明確にすることが重要です。

特に、改装や設備導入に関する条項や、退去時の物件状態に関する条項に注目する必要があります。必要であれば、賃貸人や不動産会社との間で、範囲についての確認や相談を行うことが推奨されます。

飲食店を閉店する際に最初にやるべきことや、閉店費用を抑えるためのヒントについては、こちらを参照してください。
飲食店を閉店するなら最初にやるべきことは?閉店費用を抑えるためには?

(2)原状回復工事の見積もりと業者選定

原状回復工事を行うためには、専門の業者に見積もりを依頼し費用を把握します。複数の業者から見積もりを取り、コストとサービス内容を比較検討するのもよいでしょう。

業者選定時には、過去の実績や口コミ、対応の早さなども考慮することが重要です。ただし、工事業者が賃貸人の指定業者となっている場合もあります。この点も賃貸借契約書の内容を確認する必要があります。

(3)工事計画の策定

業者が決定したら、具体的な工事計画を策定します。工事内容、スケジュール、費用の詳細を確認し、不明点があれば事前に解決しておきます。

工事中に問題がおきないようにするためにも、計画は詳細に立てることが大切です。

(4)工事の実施

工事計画に基づき、原状回復工事を実施します。

工事中は業者とのコミュニケーションを密に取り、進捗状況を定期的に確認することが重要です。

また、予期せぬ問題が発生した場合は、迅速に対応策を講じて計画の見直しを行います。

(5)工事完了後の確認

工事が完了したら、業者と共に最終的な確認を行います。工事内容が契約どおりに実施されているか、細部までチェックすることが必要です。

問題がなければ、業者に対して完了の承認を行い、必要な書類を受け取ります。

(6)賃貸人や不動産会社との最終確認

工事完了後、賃貸人や不動産会社と物件の最終確認を行います。この際、工事に関する書類や物件の状態を示す写真などを提出することが求められる場合があります。

すべての確認が済んだら、原状回復工事は完了となります。

こういった手順を踏むことで、原状回復工事をスムーズに進めることができるでしょう。賃貸借契約書の内容の確認から始め、業者選定、工事計画の策定、実施、そして最終確認まで、各ステップを確実に実行することが重要です。

原状回復や現状復旧などの用語を適切に理解し、スムーズに店舗を退去しよう

店舗の移転や撤退をする際は、「原状回復」や「現状復旧」などの類似表現の意味の違いを正しく理解することが大切です。まずは「原状」と「現状」、「復旧」「復帰」「回復」と言葉を分解して意味合いを区別し、そのうえで「原状回復」「現状復旧」「現状復帰」「原状復帰」などの類似用語の意味を考えると理解しやすくなるでしょう。物件の状態に関して、賃貸借契約書の内容の理解やそれにかかわる会話のやり取りなど齟齬なく進めることができるようになります。

また、店舗を退去する際は、原状回復工事について詳しく知ることも重要です。工事が必要なケースや具体的な手順を踏まえて、スムーズに退去を進めることができるでしょう。

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