飲食店舗の移転・閉店・撤退に関するコラム詳細

飲食店経営が苦しい!閉店するにはどうしたらいい?

飲食店の資金繰りが厳しくなると、閉店の文字が頭をよぎることがあるかもしれません。いろいろな手を打ってはみたものの、ジリ貧の状態が続く場合には、「閉店」について具体的に考えてみるのもよいでしょう。今回は、閉店のタイミングやコストについてご紹介します。

経営者としての悩み

集客や資金繰り、メニュー、人を雇えば従業員問題など、飲食店業界も他業界と同様、経営上の悩みはつきないものです。どのような問題もケース・バイ・ケースであり、コレという黄金の解決策があるわけではなく、どの経営者も試行錯誤しながら、難局を乗り切っていると言えるでしょう。それでも、苦しいときには、誰かに相談できると救われることもあるはず。業種にかかわらず、経営者仲間がいれば、相談にのってもらうと、新しい視点や良いアドバイスをもらえることがあります。問題によっては、税理士、弁護士、社労士などの専門家に相談することも考えましょう。

閉店を考えるとき

飲食店閉店を考える原因には、資金繰りが困難になることと、健康上の問題が多いといわれています。
資金繰りが厳しくなっても、運転資金を借りることは避けた方が無難です。まずは、売上高を上げるよりも、赤字を無くすように経営を見直してみましょう。
日本政策金融公庫には、新規開業資金だけではなく「一般貸付」や、業況悪化や取引企業倒産などによって困難を来している場合の「セーフティネット貸付」、店舗の増改築や機械設備導入を助ける「企業活力強化貸付」などもあるため、利用できるものがあるかどうか検討するとよいでしょう。
健康上の問題については、今後の見通しについて、一時休業や後継者探しなどを含めて、冷静に考えてみましょう。場合によっては、医療機関でアドバイスをもらうのもひとつの手です。
遅かれ早かれ、閉店しなければならない状況にあると判断した場合には、店舗の売買にたけている不動産業者に相談することをおすすめします。特に飲食店の場合には、居抜き売却できると費用の面で大きなメリットが出るので、まずは居抜き店舗の専門業者を探してみましょう。

閉店するにもコストがかかる

飲食店を閉店させるためには、開店の際と同じように、資金が必要になります。条件の良い居抜き売却先を探したり、閉店後のトラブル回避のために慎重に作業を進めたりすることができるだけの余裕が残っている段階で、閉店することをおすすめします。
ここでは、具体的な閉店コストについて簡単にご紹介しましょう。

  • 解約予告期間分の賃料

賃貸借契約書に定められている期間の賃料の支払いが必要。

  • 水道代、光熱費、リース料、中途解約違約金

引き渡しまでの水道代や光熱費に加えて、厨房機器のなかにリース物件があれば、残りの期間のリース料や、中途解約違約金の支払いが必要。

  • 従業員の給料(解雇予告手当)

従業員への解雇予告は30日以上前に行う必要がある。即時解雇する場合には、30日分以上の平均賃金を払う必要があり、いずれにしろ、少なくとも30日間分の従業員の給料が必要。

  • 原状回復工事費

スケルトン戻しか内装解体工事のみかなどによって、工事費用は大きく変わってくるが、坪あたり数万円はかかる。店舗の立地や構造、設備によっては高額になることがある。
閉店までの資金繰りが苦しい場合には、税理士に相談したり、金融機関へ交渉したりすることも考えましょう。
なお、賃貸契約を解約した際に戻ってくる保証金を当てにする場合がありますが、契約書に償却金が定めてあれば、全額は返ってきませんのでご注意ください。

閉店のタイミングは?

賃貸借契約を結んでテナント物件を借りている場合には、物件所有者・貸主に解約予告通知を出さなければなりません。解約予告期間は契約書に記されているため確認する必要があります。3~6か月間であることが多く、その間の賃料は、営業の有無にかかわらず負担する必要があります。
ただし、居抜き売却を望む場合には、引き渡し前に売却先を見つけておく必要があります。また、通常は賃貸借契約に原状回復条項が含まれているため、居抜き売却をするためには物件所有者・貸主との交渉も必要です。
したがって、居抜き売却を決意したならば、すぐに居抜き専門業者に相談しましょう。解約予告通知を出す時期についてアドバイスがもらえるとともに、物件所有者・貸主との交渉なども引き受けてもらうことができるので、スムーズにことが運びます。
営業を終了する時期については、従業員の有無、在庫量、ボトルキープ・コーヒー券・回数券等の有無、駆け込み需要の見込みの有無などによっても異なってきます。続けた場合、終了した場合についてのコストをシミュレーションして決めましょう。
また、居抜き売却を望んでいても、もしも買主が現れなかった場合には、原状回復工事をする必要があります。万が一の場合のために、原状回復工事費用の見積もりを取るとともに、工事期間を調べておきましょう。

居抜き売却するなら?

それでは、居抜き売却する場合の流れについてもご紹介しておきましょう。

造作譲渡を仲介する業者の選定

自分で買主候補を見つける方法もありますが、短時間で良質の買い手を探すには、居抜き物件専門の業者に依頼するのが一番です。そこで、まずは居抜き専門業者を選定しましょう。

物件所有者・貸主や不動産管理会社との交渉、買い手探し

居抜き売却には物件所有者・貸主の承諾が必要ですので、選定した専門業者に物件所有者・貸主や不動産管理会社との交渉をお願いしましょう。そして、希望に合う買い手を探してもらってください。居抜き専門業者ならば、買い取る確率の高い候補者へのアプローチが可能なので、早期に買い手が見つかる確率が高いでしょう。

買主候補の内見

買主候補の内見も居抜き専門業者でアレンジしてもらえます。内見の際には、譲渡対象の設備と、引き上げるものやリース物件を明確に分けて伝えましょう。設備機器の不調や故障などは、正直に買主候補に伝えることも大切です。
レンタル物品やリース物件については、買主に契約を引き継いでもらうという選択肢があるので、話を持ちかけてみるのもよいでしょう。

譲渡項目書の作成

売却する設備や物品を、明確にリストアップしたものを作成します。リストのなかに、レンタル物品やリース物件が含まれないように、くれぐれも気をつけましょう。

造作譲渡契約の確定と締結

専門業者によっては、リスクが少なくなるようにきちんと契約書も作成してくれます。自分で作成する場合には、トラブル回避のために専門家に目を通してもらうことをおすすめします。業者や司法書士など第三者の立ち会いのもとで契約を締結しましょう。

レンタル物品やリース物件などの引き上げ、不用品の廃棄処理、引き渡し

物品の動作確認のあとに引き渡しとなり、契約どおりの入金となります。引き渡しの際に、設備や機器などの取り扱い説明書も買主に渡しますので、そろえておくことを忘れないようにしましょう。

閉店する体力のあるうちに決断を!

飲食店の閉店にも、手続きや届出などの作業のほかに、テナントの引き渡しまでの空賃料や原状回復工事など多くのコストがかかります。居抜き売却できると、閉店コストを大きく削減できますので、ぜひ検討してください。それでも、造作の売却費で閉店コストをすべて賄うところまではいかないでしょう。経営の不調が長引いている場合には、できるだけ損失を抑えられるように、金銭的にも体力的にも精神的にも余力のあるうちに閉店を決断するのもひとつの手です。
参考:融資制度一覧から探す|日本政策金融公庫