飲食店舗の移転・閉店・撤退に関するコラム詳細

飲食店の「スケルトン工事」に詳しくなろう!

飲食店の開業、閉業、店舗の売買となると、必ずと言っていいほど遭遇する言葉に「スケルトン」があります。今回は、飲食店店舗の売買についてまわるスケルトン工事についてご紹介しましょう。

「スケルトン」とは?

建築用語や不動産用語では、スケルトンとは構築物の骨組みのことを指し、構造躯体(くたい)ともよばれています。間仕切りのような内装や設備と分けられるように建築されている場合には、入居者が自由に内装を施したり、設備を備えたりすることができます。
以下、スケルトンに関連する言葉について見ていきましょう。

「スケルトン物件」

スケルトン状態、つまり、内装が何も施されていない状態のテナント物件を指します。飲食店の店舗としてテナント物件を探す場合は、原則としてスケルトン物件であると考えて間違いはないでしょう。居抜き物件として取得したとしても、入居時の契約によって退去時にはスケルトンの状態で返却することが定められている場合がほとんどです。

「スケルトン渡し」

テナント物件の退去時に、スケルトン状態に戻しての引き渡しを「スケルトン渡し」と呼ぶことがありますが、「スケルトン渡しのスケルトン返し」という言い方もあるようです。
入居時の状態に戻すことを「原状回復」といい、スケルトン状態で入居した場合には、原状回復とはスケルトン渡しを指すことになります。ただし、原状回復は常にスケルトン渡しを意味するわけではないので、事前に契約書の原状回復義務に関する条項の内容をよく確認する必要があります。

「スケルトン工事」

契約書にスケルトン状態に戻すことが定められている場合には、「スケルトン工事」が必要です。
スケルトン工事とは、建物の構造体以外の部分をすべて解体し、スケルトン状態に戻す工事を指します。鉄筋コンクリートの建物の場合には、いわゆる「コンクリート打ちっぱなし」の状態にすることがほとんどでしょう。「スケルトン仕上げ」や「スケルトン戻し」と呼ばれることもあります。

テナント物件がスケルトン物件である主な理由

テナント物件が基本的にスケルトン物件である理由について考えてみましょう。

    • 建物の構造体と内装が分かれた施工ではない場合には、内装を変更するためには建て替え工事が必要になることもあるでしょう。その点、建物の構造体はそのまま使用でき、内装工事のみで安価にすむように、テナント物件はスケルトン状態になるようにしてあると考えられます。
    • 物件所有者・貸主にとっては借り手を限定したくないため、借り手にとっては数多くの候補からテナント先を選びたいため、業種業態を限定することのないスケルトン物件が総じて多くなっているのでしょう。
    • テナント交代のたびに、配管や配線、排気設備などを取り換えるだけではなく、老朽化による梁(はり)や柱の傷みを修復する機会が持てるのも、 物件所有者・貸主にとっては建物の耐久性を上げるうえで、借り手にとっては安心して入居できるという点でメリットとなっているでしょう。

スケルトン物件のメリット・デメリット

それでは、借り手側から見たスケルトン物件のメリット、デメリットを見てみましょう。

いろいろあるメリット

      • レイアウト、内装、設備などを自分の思うように作り上げることができるのが最大のメリットでしょう。厨房や客席スペースの動線も無駄なく、必要な設備をそろえられ、すべてを店のコンセプトにきっちり合わせることができるのは大きな魅力です。
      • スケルトン状態の何もないところからスタートできるので、前のテナントのイメージを残すことがないのも大きなメリットです。特に前のテナントにマイナスイメージがあった場合には、それを払拭(ふっしょく)することができるでしょう。
      • 厨房機器や排気設備なども最新のものを導入することが可能であり、人件費の節約につなげやすいというメリットもあります。さらに、それらの買い替えはかなり先のことになると考えられるので、買い替え用の資金も工面しやすいでしょう。

大きなデメリット

      • 内装や設備をすべてそろえるため、費用がかかります。
      • 内装工事が複雑であればあるほど、退去時のスケルトン工事も費用がかかります。

入居時に何もないところからすべてを用意し、退去時には何も残らないように元に戻すということから、かなりの費用がかかるのは避けられず、大きなデメリットとなっています。開店の場合には、立地条件に譲歩せざるを得ないケースが生じたり、閉店の場合にも資金繰りをする必要が生じたりします。

スケルトン工事を行う際の留意点

それでは、スケルトン工事が必要な場合に気を付けるべき点についてご紹介しましょう。

原状回復の範囲を物件所有者・貸主に確認しておく

のちのトラブルと想定外の出費を避けるため、契約書にスケルトン渡しとあっても物件所有者・貸主に確認を取りましょう。解体業者との打ち合わせの際に立ち会ってもらうのがベストです。ときには、「これは残してほしい」という要望が出ることがあり、解体費用を削減できる場合もあります。

見積もりを取る際には内装工事の設計図面も用意する

解体作業の見積もりは、工事業者が店舗を見て出すことがほとんどですが、すべて撤去するのだから簡単というわけでもないようです。解体作業中のトラブルや追加費用の発生を防ぐために、建物の図面や原状回復仕様書、内装工事の設計図面などを用意して、見積もりをもらうようにするとよいでしょう。

解約日を厳守できるようにする

すでに解約日が決まっている状況であることが多いでしょう。空家賃の期間を短くしたいという希望があったとしても、解体工事が長引いて解約日に引き渡せなくなる状況は絶対に避けましょう。通常、解約日の撤回や変更はできません。早めに解体業者と連絡を取り、ある程度の余裕を持たせたスケジュールになるようにしましょう。また、工期遅延を防ぐため、契約書内に工期と遅延損害金を盛り込んでもらうようにするとよいでしょう。

スケルトン工事の業者選定のポイント

では次に、スケルトン工事の業者を選ぶ際のポイントを挙げておきましょう。

優良な業者を選択する

工期が遅延したり、工事が途中放棄されたり、理不尽な追加費用を請求されたりというようなトラブルを回避するために、優良な解体業者を選ぶことが大切です。信頼できる業者であるかどうかのひとつの目安として、行政機関に「建設業法」、「廃棄物処理法」、「建設リサイクル法」などの違反履歴があるかどうか問い合わせる方法があります。インターネットで悪いニュースが載っていないか確認するのもよいでしょう。

工事業者が指定されている場合は?

契約書において、工事業者が指定されていることがあります。あるいは、物件所有者・貸主や管理会社から工事業者を指定される場合も少なくないようです。指定業者の見積もりは高いことが往々にしてあるので、内装工事解体専門業者から相見積もりを取って交渉する手があります。その際には、指定業者と専門業者の双方から、詳細な内容が記されている見積もりを取得し、工事内容を比較することによって適正な価格になるように交渉してみましょう。

スケルトン工事を避けたい場合には

閉店を決意したものの、閉店にかかる費用に頭を悩ませる場合があります。閉店費用の圧縮に大きく寄与するのがスケルトン工事の回避です。そこで、居抜き物件としての店舗売却を検討してみるとよいでしょう。契約書で居抜き売却が認められていることはほとんどなく、物件所有者・貸主との交渉が必要なため、まずは居抜き専門業者に相談することをおすすめします。